公認会計士が本当にオススメするIPO関連書籍5選
こんにちは、会計士KOです。
今回はIPOに関連した書籍のまとめを記事にしていきます。
『そもそもIPOとは何か?』
という点については、別途、記事にしているので以下をぜひご確認ください。
絶対に誰でも分かるIPO-IPO(株式新規公開)とは何か
今回の記事では、
自社がIPOを目指すことになり、IPOプロジェクトに急に入ってしまった
自分は会計士で担当しているクライアントがIPOを目指すこととなった
証券会社の投資銀行部門内でIPO部署に配属/異動になった
などなどの人たちに是非見てほしい記事となっています。
私は、監査法人内でIPOに関連した会計監査と、その他でちょっとしたIPOに関連する支援業務の経験があります。
IPOに関連する書籍は有象無象沢山ありますので、私もIPOに関与したはじめは『どの本を買えばいいか』非常に悩みました。
今回はまず、IPOに関与する人たちにオススメする絶対に読んで欲しい本を挙げていきます。
別途、ケース別に読むべき本シリーズの記事を挙げる予定です。
IPOに関与する人が絶対に読むべき本(書籍)5選
では、さっそく結論からです。
完全に独断と偏見ですが、IPOに関与する人が絶対に読むべき本を5冊挙げさせていただいたものがこちらになります。
以下にて理由等を解説していきますが、いずれもおすすめです。
①:これですべてがわかるIPOの実務
初めて、IPOに関与することになった人向けの本を挙げさせていただきます。
まず、IPOに馴染みのない方に関しては、IPOの全体像、IPOを取り巻く諸規則、法令などについての理解をすべきでしょう。
特にIPOに関しては、会社法、金融商品取引法、有価証券上場規定等、登場する法令/規則が数多くあります。
また、登場人物はIPOを予定している企業だけではなく、監査法人や主幹事証券会社、その他印刷会社や保振など多岐にわたります。
そこでまず、体系的にIPOを理解できる本として、以下を挙げさせていただきます。
この本は、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、みずほ証券株式会社の共著となっています。
特に監査法人のみから出版されている本が数多くあるのですが、証券会社側の視点が抜けていたりと片手落ちになっている印象のものも少なからずありますので、証券会社の視点を取り入れているこの本は、ベースのインプットとして非常に有用かと思います。
ただし、基本的に監査法人から出版されている分厚い本は大体同じことを書いているので、どこかで立ち読みして自分が読みやすそうと思った本を選ぶのも吉です。
②:IPOビジネスの本質
次に、事業会社の方が読むべき本を挙げてみました。
経営者が自らIPOについて語る本などは一定数あるのですが、どうしてもビジネスサイドのお話に寄っていきがちです。
とはいえ、経営者ではない我々が知りたいのは、「例えば、IPO責任者としてどのように振舞っていけば良いのか?」という点です。
そういった本が少ない(というかほぼ存在していない?)中、大変貴重な本が以下です。
この本は、日経新聞等にも頻繁に記事を投稿され、数多くの企業をIPOさせてきた谷間真氏(ご本人は会計士)の著作です。
特にIPO時点における事業会社の立ち回りについて非常に明快に記載されています。
IPOプロジェクトチームの組成のポイントや監査法人との渡り合い方、主幹事証券会社の対応 の仕方等、上場日までの具体的なスケジュール感などかなりリアルに描かれているのが特徴です。
もちろん、何社も上場させてきた!という方であれば不要かと思いますが、そうではない方や、監査法人側から会社の考えていることを知りたい等の場合には必見です。
(なお、本書は若干、監査法人に厳しすぎる印象を受けますので、よほどのことが無い限り、無駄に冷たい対応をすることは無駄な労力を生むと感じます。)
③:IPOの経済分析
次にIPO時のバリュエーションに関する書籍を挙げさせていただきます。
発行体であるIPO企業、証券会社間にてIPO時のバリュエーションは特に揉めるところです。
資金調達やEXITのためにバリュエーションを高く付けたい発行体サイドと、(スプレッド(手数料)はディールサイズに応じて上下するものの)投資家に損をさせることのできない証券会社サイド、その利害に関する統計情報とその考察が記載されています。
特に、本旨以外でも、IPO時のバリュエーション手法の変遷や諸外国との比較等が一番よくまとまっている書籍となりますので、そのあたりの知識が無い方は是非購入されて下さい。
補足として、バリュエーションの基礎が分かっていない方は以下の書籍「コーポレートファイナンス 戦略と実践」がお勧めです。
本書も非常に良書ですので、買っておいて損はないかと存じます。
IPO時のバリュエーションは基本的にPERマルチプル等、類似業種批准方式を利用していることが殆どですので、当該内容がぱっと分かるようであれば、本書もある程度は理解可能かと存じます。
④:ベンチャー企業の法務AtoZ
次に法務関連の書籍です。
法律専門家の方が既に専任されているケースについては大きな問題はないかと思いますが、ベンチャー企業などに関しては法務基盤が盤石ではないケースも散見されます。
そのようなベンチャー企業は特に証券会社の審査が進むにつれて、下請法の適用が問題となったり、個人情報の保護が問題となったり、やはり網羅的に確認することが出来ていない印象です。
本書はIPO支援に定評のあるAZX法律事務所の著作で、IPOに直接関連する箇所以外でも、法務においてベンチャー企業が網羅的に検討すべきポイントが記載されています。
一度、自社のビジネスに該当しそうな内容を眺めてチェックリスト的に利用することもできるかと思いますので、是非ご覧ください。
(最初に挙げた監査法人系のIPO書籍などは、IPO関連の情報は網羅的に記載されているものの、やはり突っ込んだ法律関係の具体的な記載が非常に甘いので、別の角度からの知識のインプットが必要です。)
⑤:起業のファイナンス
最後に資本政策や資金調達に関連する書籍です。
IPOのかなり前段階の議論になるかと思いますが、特に創業者株主持分の決定方法や、共同創業者に関する諸論点、株主間契約、その後の調達ラウンドが進行してVCからの調達を行う場合の実務を知りたい方向けとなります。
特に、資本政策は一度調達などを挟むと原則、巻き戻すことはできないものです。知識不足が命取りになるという点はどのような書籍でも繰り返し記述されています。
本書はVCの著名キャピタリスト、磯崎哲也さんの著作です。個人的にはよくここまで読みやすく本を書けるなぁという感想しかありません。
何度も読み返している本なので、是非ベンチャー企業やスタートアップ企業に関与される方は買っていただきたいです。
また、続編となる「企業のエクイティファイナンス」や磯崎さんのメルマガ「isolog」(現在はnoteにて更新中)もおすすめです。
加えて、投資契約などに関しては、経産省の「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」や、以下のスタートアップ投資ガイドブックなどを読めば基礎知識はある程度インプット可能ではないかと思います。
ちなみに、資本政策やVC契約等の学び方の個人的なお勧めは、
②:起業のエクイティファイナンスをかいつまんで読む
③:経産省資料を読む
④:スタートアップ投資ガイドブックを読む
⑤:isologで実際のIPO銘柄の分析を読んで見る
といった流れです。
まとめ
今回の記事は以上となります。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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