監査対象会社数はどれくらい?監査報酬の平均はどれくらい?-監査実施状況調査2018年度版を読み解く

こんにちは。会計士KOです。

今回は、2019年11月11日に日本公認会計士協会から提出された「監査実施状況調査2018年度版」から、監査にまつわる様々な数値を確認していきたいと思います。

そもそも監査実施状況調査とは何かについてもまとめていきたいと思います。

そもそも監査実施状況調査とは?

監査実施状況調査とは何でしょうか。ざっくり言ってしまうと監査の人数や時間数、監査報酬額を取りまとめた統計資料です。

詳細については、日本公認会計士協会が以下の通りに記載をしてくれています。

監査実施状況調査は、会員が協会へ提出する監査概要書(写)及び監査実施報告書から抽出したデータを元に、会員の監査の充実と監査の品質の向上に活用するために、監査に関与する者の人数、監査時間や監査報酬額を客観的に統計資料として取りまとめ公表するものである。

-日本公認会計士協会HPより引用

なるほど、新人の頃に良く作らされていた監査概要書や監査実施報告書はこのような形で利用されていたのですね。

新人の方はもしかすると、監査概要書や監査実施報告書の作成の意義すら知らなかった人もいるかもしれません。

なお、監査法人以外の方にも、監査概要書、監査実施報告書とは何かを説明しておくと以下の通りです。

監査概要書とは

監査概要書とは、「金融商品取引法」に基づいて監査証明を行った公認会計士や監査法人が、監査の概要に関して記載を行った各財務局長に提出する書類のことです。

また、監査概要書は、基本的に金融商品取引法監査終了後に各財務局長に提出されます。

内容としては、例えば、監査報告書にサインを行った社員の名前や、その他で関与した公認会計士の数、その他の補助者の数や業務に従事した監査日数又は時間、監査報酬などを記載します。

詳細な内容としては、以下の通りに財務諸表等の監査証明に関する内閣府令に定められています。

興味がある人がいれば確認をしてみてください。

財務諸表等の監査証明に関する内閣府令
(監査概要書等の提出) 第五条 公認会計士又は監査法人は、法第百九十三条の二第六項の規定により提出すべき報告又は資料の一部として、監査、中間監査又は四半期レビュー(以下「監査等」という。)の従事者、監査日数その他当該監査等に関する事項の概要を記載した概要書を、当該監査等の終了後当該監査等に係る第一条各号に規定する書類を提出すべき財務局長等に提出しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/332M50000040012_20181130_430M60000002054/0?revIndex=1&lawId=332M50000040012&openerCode=1#140

監査概要書は、本来は金融庁に提出するものですが、実はこの写しは以下の通りの取り決めによって、日本公認会計士協会に提出されています。

内閣府令第5条
1.監査概要書等(写)の本会への提出期限 金融商品取引法に基づく監査証明を行った場合は、監査概要書、中間監査概要書及び四半期レビ ュー概要書の写しを本会にご提出いただくことになっております。 それらの提出期限は、以下のとおりです。

・監査概要書(写)、中間監査概要書(写) ……… 事業年度経過後4か月以内

・四半期レビュー概要書(写) ……… 四半期会計期間経過後3か月以内

https://jicpa.or.jp/specialized_field/download/audit/summary/

監査実施報告書とは

監査実施報告書とは会社法監査等、特定の法定監査等を実施している場合に、監査の概要に関して記載を行った日本公認会計士協会に提出される書類のことです。

また、監査実施報告書については、基本的に各法定監査終了後に各財務局長に提出されます。

内容としては、例えば、監査報告書にサインを行った社員の名前や、その他で関与した公認会計士の数、その他の補助者の数や業務に従事した監査日数又は時間、監査報酬などを記載します。

ほとんど監査概要書と変わりませんね。監査概要書の証券取引法以外バージョンの概要説明資料と捉えればよいでしょう。

ただし。証券取引法に基づき監査を行った場合の監査概要書とは異なり、日本公認会計士協会に原本がそのまま提出され、金融庁への提出はされません。

監査実施状況調査とは

結論として、監査実施状況調査とは、監査概要書(正確には写し)や監査実施報告書等を日本公認会計士協会が取りまとめ、統計データとして年度ごとに公開している調査報告書となります。

最新版については、以下からその内容がすべて確認できますので、興味がある人は是非確認をしてみてください。

監査実施状況調査(2018年度)

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20191111jjg.html

監査実施状況調査の内容を確認する

さて、以下では、監査実施状況調査から気になったポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

その前に、そもそもの集計範囲についてもう一度おさらいしておきましょう。

集計期間

集計期間は2018年4月期から、2019年3月期までの1年間に係るものです。

集計書類

集計書類は以下の通りです。

基本的には法定監査を受けたものと考えてくだされば問題ないかと思います。

監査実施状況調査の集計範囲(クリックして開いてください)

監査概要書(写)

会社法監査実施報告書

信金・信組・労金の監査実施報告書

私立学校振興助成法監査実施報告書

特定目的会社監査実施報告書

投資事業有限責任組合監査実施報告書

独立行政法人監査実施報告書

地方独立行政法人監査実施報告書国立大学法人等監査実施報告書

社会福祉法人監査実施報告書医療法人監査実施報告書

施設型給付費を受ける教育・保育施設等監査実施報告書

集計結果

では、集計結果です。個人的に気になったポイントを挙げていくこととします。

監査対象会社数

監査対象会社数は以下の通りです。

2017年度

金商法(個別のみ):653社

金商法(連結あり):3,284社

会社法:5,762社

2018年度

金商法(個別のみ):660社

金商法(連結あり):3,287社

会社法:5,782社

昨今は、新規上場が多いにも関わらず、金商法の監査対象社数が殆ど変わりませんね。

これは統廃合や、上場基準を満たさなくなったことで新規上場社数と同程度の上場廃止があることが理由ですね。

盛んな新規上場の裏で、上場廃止もかなり多いことが良くわかります。

監査に関与した人数の平均

監査に関与した人数の平均は以下の通りです。

以下には、監査責任者や監査補助者(会計士、その他)が含まれます。

2017年度

金商法(個別のみ):13.0名

金商法(連結あり):22.3名

会社法:12.9名

2018年度

金商法(個別のみ):13.1名

金商法(連結あり):21.9名

会社法:13.2名

こちらに関してもあまり大きな変更は見られませんね。

監査時間数総計

監査時間数の平均は以下の通りです。

2017年度

金商法(個別のみ):1541.7時間

金商法(連結あり):4,156.3時間

会社法:969.7時間

2018年度

金商法(個別のみ):1,550.5時間

金商法(連結あり):4,259.6時間

会社法:989.2時間

こちらに関しても大きな増加は確認されませんね。

しかし、若干の増加が確認されます。監査の品質追求のための工数増加等がささやかれていますが、こちらについては統計的にも事実なのかもしれません。

次回以降の調査でも時間数の増加については、顕著になっていくのではないでしょうか

監査報酬総額

監査報酬の平均については、以下の通りです。

2017年度

金商法(個別のみ):17,047千円

金商法(連結あり):49,259千円

会社法:11,863千円

2018年度

金商法(個別のみ):17,465千円

金商法(連結あり):50,871千円

会社法:12,442千円

監査報酬については、かなり伸びていますね。

特に金商法の平均監査報酬は1.5百万円ほど増加しており、昨今の監査報酬値上げの波は事実のようです。

また、金商法(連結あり)の監査報酬は50百万円超となっており、大台に乗っています。

 

まとめ

今回の記事は以上です。

監査概要書や、監査実施報告書の意義などについても知っておくと自身の業務の内容が良くわかるかもしれません。

ではでは。