収益認識基準の注記はどうなる?収益認識基準の表示および開示に関する審議の状況のアップデート

こんにちは、会計士KOです。

今回は、ASBJにおいて審議されている収益認識会計基準の表示および開示に関して、その審議の状況にアップデートがあったので、その内容について、詳しく見ていきます。

収益認識基準については、会計士であってもその導入の正解が見えてこず手こずっている方も多いのではないでしょうか。

かくいう私もその一人ですが、最新のASBJの見解を追っていくことで基準の背景や、趣旨の理解などが進むものと考えていますので、是非、以下の内容は確認しておくべきかと思います。

 

そもそも、収益認識会計基準の表示および開示の審議とは?

収益認識基準自体は2018年3月30日時点に、企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」として公表されました。

しかしながら、同会計基準の80項、156項においては、以下のように記載されています。

■収益認識会計基準80項

顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記する。

なお、当該注記は、重要な会計方針の注記には含めず、個別の注記として開示する。

■収益認識会計基準156項

IFRS 第 15 号の注記事項の定めは、収益に関する財務諸表利用者の理解に役立つことを目的として、従来の会計基準と比較して拡充されており、比較可能性を改善するものと考えられる。

一方、当該注記事項の拡充に対して、我が国の市場関係者からは、IFRS 第 15 号の開発段階から、特に契約残高や残存履行義務に配分した取引価格等の一部の定量的な情報の注記について、実務上の負担に関する強い懸念が寄せられており、最終化された IFRS第 15 号の注記事項の定めに対しても引き続き懸念を示す意見が聞かれている。

本会計基準を早期適用する段階では、各国の早期適用の事例及び我が国の IFRS 第 15 号の準備状況に関する情報が限定的であり、IFRS 第 15 号の注記事項の有用性とコストの評価を十分に行うことができないため、必要最低限の定めを除き、基本的に注記事項は定めないこととし、本会計基準が適用される時(平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)まで(準備期間を含む。)に、注記事項の定めを検討することとした。


また、本会計基準を早期適用する場合には、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとした(第 80 項参照)。企業が履行義務を充足する通常の時点とは、例えば、商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をいう。当該注記を重要な会計方針の注記として開示すべきか否かについては、本会計基準が適用される時までに他の注記事項の検討と合わせて整理するが、実務の混乱を避けるため、早期適用時においては個別の注記として開示することとした(第 80 項参照)。

実は正式な基準として公表されたのに、注記に関する事項は、別途審議するという旨が記載されていてまだ審議中なんです。

そして、その公表は本適用までに定めを決めるものとされていますね。

今回はその審議の状況に関する記事となります。

 

ASBJの審議内容について

では、その注記に関する事項はどのような議論のステータスなんでしょうか。

最新のアップデートは2019年9月25日で、審議内容については、以下から確認できます。

本記事では、以下に有用と判断される記載の抜粋を記しますが、気になる方は以下から原文を確認してください。

 

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20190925_09.pdf

 

注記内容に関する議論の抜粋

では、現状、有用と考えられる内容について、以下に抜粋しておきます。

 

注記に関する議論のポイント

(1) 収益認識に関連して重要な会計方針として注記すべき事項として、少なくとも次の項目を要求することを提案する。


① 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
② 企業が当該履行義務を充足する通常の時点

上記以外にも、収益認識に関する事項で、一般的な原則(企業会計原則及び同注解、並びに企業会計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第 24 号」という。))に照らして重要な会計方針に該当すると判断された情報についても、重要な会計方針として注記する。

(2) 収益の損益計算書上の表示科目については、限定せず、売上高、売上収益、営業収益等の科目から、企業が適切と判断するものを用いることを提案する。

(4) 経過措置として、改正収益認識会計基準の適用初年度においては、改正収益認識会計基準に定める注記事項を、比較情報として開示しないことができるものとすることを提案する。

なるほど、かなり明確に決まってきているようです。

特に履行義務の内容や履行義務の充足時点に関する事項は記載が難しそうですね。

また、売上科目に関しても、企業が適切と判断したものを利用していい旨が決定しそうです。これに合わせて財務諸表等規則も変更されるのでしょうか。

なお、検討の方針の基本は以下の通りとなっており、やはりIFRS15号と足並みはそろえるという形にはなりそうです。

2. 注記事項を検討するにあたっては、次の対応を基本的な方針としている。
(1) 包括的な定めとして、IFRS 第 15 号と同様の開示目的及び重要性の定めを収益認識会計基準に含める。また、原則として IFRS 第 15 号の注記事項のすべての項目を収益認識会計基準に含める。
(2) 財務諸表作成者が当該企業の契約の実態にあわせて個々の注記事項の開示の要否を判断することを明確にし、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる項目については注記を省略することができることを明確にする。

 

まとめ

基本的にASBJの審議の状況はウォッチしているので、またアップデートがあれば記事にします。

ではでは。明日も頑張りましょう。